読了:『語学の天才まで1億光年』

語弊を恐れずに言えば「狂人の語学」ノウハウ本

この前ちょっとした国内旅行をしたのですが、その時の新幹線での暇つぶしのために表題の本を購入しました。

語学の天才まで1億光年 | 集英社インターナショナル 公式サイト

https://www.shueisha-int.co.jp/publish/%E8%AA%9E%E5%AD%A6%E3%81%AE%E5%A4%A9%E6%89%8D%E3%81%BE%E3%81%A7%EF%BC%91%E5%84%84%E5%85%89%E5%B9%B4

学んだ言語は25以上! 辺境ノンフィクション作家による、超ド級・語学青春記。インドで身ぐるみはがされたせいで英語が上達、暗黒舞踏家のフランス人女性に生きたフランス語を学び、コンゴでリンガラ語を話してウケまくる。特殊な「言語体験」に基づき「言語」を深く楽しく考察し、自動翻訳時代の語学の意味を問う!

著者の高野秀行さんは、早稲田大学時代からアフリカまで珍獣モケーレ・ムベンベを探しに探検をしている探検家・エッセイストです。この本はその探検行のなかでも語学に力点をおいていろいろなエピソードを紹介してくれています。

モケーレ・ムベンベ探索のために現地へ赴き、コンゴの共通語であるリンガラ語を学んで現地人と交渉、さらに話者の少ない現地語ボミタバ語をなんとか駆使して目的を達するまでを持ち前の軽妙な語り口で著しています。

その後はフランス語に悪戦苦闘したり、ミャンマーでアヘン製造の地にたどり着くためにシャンの言語を習得できないか試行錯誤するなど、とにかく語学をツールとして使い倒しています。

言語を現地に慣れて相手のことをよく知るために道具として徹底的に使い倒しているのは、一語学学習者としてとても痛快な思いです。言語を学ぶのにはいろいろな動機がありますが、どんな学習でも往々にして手段が目的化しがちです。学ぶことで自分の存在を確認するというか(著者も一時そのようなアイデンティティクライシスに陥っています)。この点、著者は語学を徹底的に手段として使っており、そのような沼からうまく回避できている……ように見えます(いや、これは語学学習者からの観点で、普通の人から見たら著者は立派に語学に「沼っている」かもしれません)。

学習方法も過激かつ実践的です。いきなり現地に飛び込み語彙を増やしつつ、文法を推測し、ノートやメモにまとめて、最終的にはテキストにしていく。語学は話者と学習者の間で起こる小さなフィードバックの積み重ねが一番効果的なので、作中では色々試行錯誤しているように書かれていますが、端から見ると一直線に語学学習の最短ルートを通っているように感じます。とはいえ、この方法は相当なガッツを要求するので万人向けではないのですが……。

語学学習は長い旅なので、いくら「色んな人と交流したい!」という志を高く持っていても途中でくじけてしまいがちです。この本は、語学という道具一本でどこまでやれるのかを示す、語学学習者にとって勇気づけられる本のように感じました。

同時に、語学を学ぶのにはしっかりとした体力と気力を要するというようにも読めます。まさにその通りなので、しっかり休養を取りつつ一つ一つ積み上げたいところですね。

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